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- 『夢幻紳士』(むげんしんし)は、高橋葉介による漫画、および高橋葉介による「夢幻魔実也」(むげん まみや)を主人公とする漫画作品群の総称である。また、これを原作とするOVA、および主人公の異名を指す場合もある。 「夢幻紳士」は高橋葉介の代表的シリーズで、昭和初期の日本を主な舞台とし、黒衣の探偵「夢幻魔実也」を主人公とする。 作品・シリーズによって作風や設定が大きく異なり、これらは基本的には世界観が異なる物語として、主人公「夢幻魔実也」も別世界における同姓同名の別人物という形で相互に関連しないように描かれている。 反面、設定や執筆時期が重複する作品はどの世界観に属するのか境界がしばしば曖昧である。作者のお遊びとして別世界観の主人公同士が共演するような作品もあり、また多くの作品が繰り返し出版社や収録形式を変えて再録されているため、全作品の厳密な分類は困難となっている。本記事では説明の便宜上、2008年現在最新の作者の定義に沿って分類・記述し、必要であればその中でさらに細分化あるいは別節を設けて説明する。 なお、本作の主人公と同じ読みの名前を持つ「麻実也」(まみや)というキャラクターが作者の短編『仮面少年』(朝日ソノラマ刊「マンガ少年」掲載・1979年)に登場するが、本作と物語上の関係は無い。キャラクターデザインは似通っており、掲載時期から見て後述の〈夢幻紳士 マンガ少年版〉のデザインの原型と考えることは可能である。 昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇漫画。少年探偵「夢幻魔実也」が怪奇事件に挑む姿を描き、猟奇的な表現やナンセンスユーモアが特徴。最初期の夢幻紳士作品で、当時より作者が得意とした、同一人物を主人公とした短編連作という形式をもつ。 毛筆の強弱を利用して一本の線が自在に太く細く変化する大胆かつ神経質な描線、また昭和初期のガジェットを執拗に描き込んだ背景など、漫画表現としては異端に属する美術表現もこの時期の特徴である。雑誌「マンガ少年」に連載された作品は特にこの傾向が強いが、連載最終話の「夢幻少女」やそれより後の作品になる短編「案山子亭」「亜里子の館」では画風が幾分マイルドになり、それまでのナンセンスユーモアを抑えて静かで叙情的あるいはドライな作風になっている。 最初に描かれた夢幻紳士作品群。マンスリーマンション は「マンガ少年」(朝日ソノラマ刊)掲載作品を中心とする。「マンガ少年」においては、1981年に短編連作『夢幻紳士』シリーズとして全4話連載された。ほかに他誌に掲載された「案山子亭」(チャンネルゼロ・プレイガイドジャーナル社刊「まんがゴールデンスーパーデラックス 漫金超」掲載・1982年)・「亜里子の館」(少年画報社刊「少年KING増刊 少年少女SFまんが エイリアン」掲載・1982年)の短編2作を加えた計6作が〈マンガ少年版〉としてすべて同一の世界観上にあるとされる。これら6作のタイトルはすべて『夢幻紳士』であり、「マンガ少年版」の題は1985年の単行本刊行時に後述する〈夢幻紳士 冒険活劇篇〉と区別するために付加されたものである。 初出単行本に書き下ろされた挿し絵入りの小説「絵物語 夢幻紳士・遊鬼塔の怪人」(1983年)は以後の〈マンガ少年版〉を纏めた単行本にも常に併載されているが、この作品には〈冒険活劇篇〉のキャラクターである「老博士」と「甲保」が登場しており、また物語展開も〈冒険活劇篇〉初期にみられたアクション性の高いもので、一概に〈マンガ少年版〉の一編とは言い切れない面もある。 主な登場人物 夢幻魔実也(むげん まみや) 主人公。やや背の低い長髪の美少年。黒い背広と山高帽がトレードマーク。裕福な家庭の子息で、一種の道楽として探偵業を営む。物腰は丁寧だが慇懃無礼で、人を食った言動が多い。テレパシー能力者で、相手に暗示をかけたり他人の強い思念を捉えることができる。坊ちゃん育ちのためか世事に疎いところもあるが、探偵としては極めて優秀で多くの事件を解決し、警視総監からの信任も厚い。決め台詞は「実はもうつかまえてあるのです」。 江戸川警部(えどがわ) 警視庁猟奇課警部。恰幅のいい髭面の男性。警官としての面子や矜持から魔実也を快く思ってはいないが、事件解決のため渋々彼に協力を仰ぐ苦労性の中間管理職。常識人であるがゆえにいつも津田沼一戸建て に振り回される。名前の由来は江戸川乱歩か。 アルカード 魔実也に仕える召使い。禿頭で大柄な体躯の初老の男。無口で忠実、一見無害な男であるが、時に魔実也の悪ふざけに共犯者的な笑みを浮かべる事も。 夢幻紳士(朝日ソノラマ刊・1983年3月発行)ISBN 9784257900436 - ハードカバー版。 夢幻紳士【マンガ少年版】(朝日ソノラマ刊・デュオセレクション・1985年7月発行)ISBN 9784257900627 - ソフトカバー版。 高橋葉介作品集 7 夢幻紳士I(朝日ソノラマ刊・1987年12月発行)ISBN 9784257901563 - ワイド版。前半に〈マンガ少年版〉全話、後半に〈冒険活劇篇〉の初期エピソードを収録。 ヨウスケの奇妙な世界(1) 夢幻紳士 マンガ少年版(朝日ソノラマ刊・ソノラマコミック文庫・1998年8月発行)ISBN 9784257720218 - 文庫版。〈マンガ少年版〉全話の他、夢幻紳士シリーズと異なる短編3作を収録。 新装版 夢幻紳士〈マンガ少年版〉(朝日ソノラマ刊・ソノラマコミック文庫・2006年12月発行)ISBN 9784257724018 - 文庫版。〈マンガ少年版〉全話の他、夢幻紳士シリーズと異なる短編8作を収録。 この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。 灰地の項目は確認が不十分な編集。 表中の収録単行本の詳細は前節「単行本」を参照。なお(主に単行本に描き下ろされた)イラスト・口絵の類は種類が多く、またタイトルの特定・タイトルと画の同定が困難なため、リストからは省略している。 作中で魔実也を称して「不動産担保ローン 」と呼ぶ唯一のシリーズ。「月刊ベティ」(アニドウ刊)に掲載された短編「脳交換クラブ」(1982年)を第1話とし、その後雑誌「リュウ」(徳間書店刊)及び「少年キャプテン」(同社刊)で1983年-1991年に渡って掲載された連載漫画『夢幻紳士』を指す。この3誌の連載は掛け持ちではなく、「月刊ベティ」創廃刊の後「リュウ」で連載を開始、さらに後に「リュウ」の休刊にともない掲載誌を「少年キャプテン」に移したもので、掲載誌こそ違うものの実質的にはひと繋がりの連載シリーズである。 連載時の題名は〈マンガ少年版〉と同じく『夢幻紳士』であり、特に初期作は執筆時期・作風とも〈マンガ少年版〉に近いため、後述する作者による定義を措けば世界観の区別が困難である。特に第1話「脳交換クラブ」の掲載時期は〈マンガ少年版〉の「夢幻少女」と「案山子亭」の間に位置するが、作者は一貫して「脳交換クラブ」を〈マンガ少年版〉ではなく〈冒険活劇篇〉の作品と見なしており、第2話にあたる「伊号700奪回せよ」は「リュウ」誌での連載第1作目にも関わらず「脳交換クラブ」の直接の続編となっている。 本作を原作とするOVAが1987年に発売されており、このタイトルは原作のアニメージュ・コミックスでの副題(「夢幻紳士 1 冒険編」「夢幻紳士 2 活劇編」)を合成し『夢幻紳士 冒険活劇編』となっている。原作でも1998年の文庫化に際し『夢幻紳士 冒険活劇編』の名が正式にシリーズの呼称として与えられ、後2006年に再度文庫化された際に他のシリーズとの統一をとるためか「武蔵野マンション 」の字に改められた。これ以前には正式な呼称がなく、他シリーズとの区別の際には(アニメージュ・コミックスのブランドで最初に単行本化されたことから)「アニメージュ・コミックス版」と呼ばれた。また作者が〈冒険活劇篇〉連載後期のコメディ性を指して「スチャラカ・ホーム・コメディ」と称した[1]ことから、俗に「スチャラカ編」とも呼ばれる。 作者にとって異例の長寿連載であり、執筆時期によって作風が大きく異なる。主人公「夢幻魔実也」と彼を取り巻く環境は同一であるが、ジャンルは怪奇アクション漫画から伝奇冒険活劇、スラップスティック・コメディへと変転している。この項では作風によって大きく3期に区切り、それぞれについて述べる。 昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇アクション漫画。少年探偵「夢幻魔実也」が怪奇事件に挑む姿を描く。オカルティックな題材と、各話に必ず挿入されるアクションシーンが特徴。 〈マンガ少年版〉の後期の作と作風が非常に近く、魔実也のテレパシー能力もほぼ同様の定義である。 昭和初期の日本から第二次世界大戦前夜の世界各地に舞台を転々と移す、コメディの要素を含む冒険活劇漫画。少年探偵「夢幻魔実也」が巻き込まれる数々のトラブルに挑む姿を描く。舞台の時代性を感じさせる情景描写と、当時の世相を反映した作劇上のガジェットが特徴。特に大日本帝国陸軍、ナチス・ドイツ、満州国等が多く扱われた。 初期に見られた武蔵野タワーズ な要素がほぼ排され、作風としては伝奇アクションに近い。魔実也の性格は初期の超然としたものから、表情豊かなより少年らしいものに変わっている。特に福音温子・夢幻狂四郎などのトラブルメーカーの登場により、狼狽えたり所謂ツッコミを手厳しく入れたりという行動を取るようになった。また魔実也のテレパシー能力の設定はこの時期以降無視されている。 昭和初期の東京を舞台とするスラップスティック・コメディ漫画。少年探偵「夢幻魔実也」とその家族が巻き込まれる数々のトラブルに翻弄されつつも、ドタバタの内に解決に導く姿を描く。テンポ良く挿入されるギャグの連続と、人情喜劇的なハッピーエンドが特徴。 舞台は日本に固定され、起こる事件も従来より遥かに狭いスケール、かつ荒唐無稽なものに変わっていった。主人公以外流動的であった主要キャラクターの配置も、魔実也・温子・狂四郎・雪絵の4名に固定されるようになる。昭和初期という舞台設定はしばしば意図的に無視され、現代あるいは昭和中期を下敷きにしたギャグ表現が多く使われた。扉の前の1ページに本編と無関係な挿話が入るスタイルが定着したのもこの時期である。 画風はギャグタッチに整理され、キャラクターの頭身が低く丸みを強調したものになる。特に狂四郎のデザインは変化が激しく、元々の大柄な体躯の怪人物といった外見から、だるまのように太めで全体に丸々としたデザインに変わっている。 連載終盤ではさらに魔実也の性格が大きく変化して、従来常識人として描かれていた彼が平然と相手をからかい、事態を自ら引っかき回すキャラクターに変わっている。これは〈マンガ少年版〉のキャラクター性に近いが、よりパワフルで能動的である。 夢幻魔実也(むげん まみや) 主人公。やや背の低い、くせのある湘南 不動産 の美少年。黒い背広がトレードマーク(他のシリーズの特徴である山高帽は滅多に被らない)。15歳にして探偵業を営む。性格は執筆時期により大きく変化するが、生死に関わるような重大なトラブルに対し動じない点はおおむね共通している。特技は女装と早着替え。相手の目を欺くための変装とは言えとかく女装シーンが多く、中期に付加された「嫌々女装している」という設定も後期には有名無実化していき、実は本人の趣味で女装しているという疑惑までも作中でかけられている。コルト25オートマチックを愛用。 最終話、真珠湾攻撃中のハワイで温子とともに行方をくらますが、後に温子と結婚し一女魔子(まこ)をもうけた事が明らかになる。 福音温子(ふくね あつこ) 本編のヒロイン。通称アッコ。後ろでまとめた明るい色の髪が特徴の少女。「ミイラの花嫁」事件で魔実也と知り合い、以来親密になる。素直で明るいが、いささか無学ではすっぱな性格。はじめは魔実也とも口喧嘩が絶えなかったが、いつの間にかべた惚れに。魔実也を愛称で「マミ」と呼ぶ。孤児出身で浅草の踊り子(ここではストリッパーを指す)やカフェの女給で生計を立てていたが、うやむやの内に魔実也の助手の立場に落ち着いた。 夢幻狂四郎(むげん きょうしろう) 魔実也の父。眼光鋭い逗子 不動産 の偉丈夫として描かれていたが、画風の変化に従いとぼけた顔で肥満ぎみの巨漢へと変化していった。生来の悪漢で金のために大小様々な悪事に手を染め、魔実也にとっては悩みの種。強引で大雑把、女に弱く道義感も薄いが、友誼には厚く家族にも彼なりに愛を注ぐ。物語後半から着ぐるみを好んで着用するようになった。決め台詞は「甘いわ息子よ!!」。 夢幻雪絵(むげん ゆきえ) 魔実也の母。上品で表情豊かな美女。明るく温厚で物おじしない性格だが、愛する狂四郎の浮気にはうるさい。クジ運が異常に良くギャンブルでは負け知らず。愛称で魔実也を「マーちゃん」、狂四郎を「狂四郎様」と呼ぶ。 アルカード 夢幻家に仕える召使い。禿頭で大柄な体躯の初老の男。第一次大戦中、ヨーロッパ戦線において狂四郎に命を救われて以来忠節を誓う。忠実にして温厚な男だが、怒りを爆発させれば悪鬼のような形相になり超人的な膂力を発揮する。体の丈夫さでは誰にも負けず、大抵の爆発でもかすり傷程度で済ます。トランシルバニア出身。この事からも名前の由来はブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』と思われる。 夢幻猫(むげん ねこ) 狂四郎の妹で、魔実也の叔母にあたる。妖艶な美女。手下を従え数多くの悪事を行う妖婦で、次々と夫を変えあるいは殺し、通称「猫夫人」と呼ばれる。魔実也の天敵の1人だったが、作風の変化により男日照りのコミカルな年増女といったキャラクターに変わっていった。このため作中回想で描かれる若き日の姿は初期の設定にそぐわない大雑把な性格で、トップレスでいることもしばしばである。